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書評 「スクラップド・プリンセス」 その1: 思い悩む 己の存在意義とは?

「スクラップド・プリンセス」

榊一郎作の小説で私のお気に入りの一冊だ。
小説で一冊お勧めを紹介しろ、と言われれば、まよわずお勧めしたい小説だ。
(ネタバレあるので続きからどうぞ)
両親を亡くした兄姉妹の三人がいたことから始まり、妹が重大な問題によって捨てられた姫君だったこと、そしてその妹が命を狙われて兄姉が助けるために妹と共に旅に出る、というものだ。
(重大な問題、というのは世界を滅ぼす「世界の猛毒」と予言されたことだ。予言の成功率はほぼ限りなく百パーセントであるため、彼女は本来殺されるはずだった。それを赤子のときに助けられたのだ)

物語の大まかな流れは王道的なものだろう。
しかし、実際の内容は非常にリアルでシビアなものだ。
一方でシビアな展開に負けないギャグと濃いキャラが面白いところだ。



常に全力でぶつかり合うキャラクターたち

スクラップド・プリンセス(以下すてプリ)のキャラたちは常に全力投球だ。
家族との喧嘩であろうと、話し合いであろうと、他人との関係であろうと、戦いであろうと、敵であろうと、味方であろうと、そこだけは変わりがない。
ただ、それだけでは他の作品との極端な違いはない。
すてプリのキャラたちはみなそれぞれに斜め方向に全力投球なのだ。



例えば、姫君として命を狙われることになるパシフィカ。
彼女は常に天真爛漫だ。天真爛漫でバカだ。
卵が大好きでモンスター並みの貫禄を持つ鶏と卵を狙い本気の格闘をし敗北するし、兄とナイフとフォークを使って悪口混じりの無作法な喧嘩をする。
常に元気であることがトレードマークのような少女だ。

だが同時に彼女は「無力であること」、「『世界の猛毒』と称され世界中から命を狙われる存在である」、「兄姉とは血が繋がっていない義兄弟であること」とシビアだ。

パシフィカは常に殺し屋に狙われ、それを兄や姉から常に守られ続ける存在だ。
しかも彼女の義父は一巻で彼女を狙った殺し屋に殺されている。
彼女は「自分に降りかかる火の粉を振り払うこともできない存在」なのだ。
しかも、何十年も家族同然の暮らしをしたとはいえ「血が繋がっていない兄と姉」にである。
血が繋がった家族なら、家族を守るのは当然だろう。少なくとも一般常識的にはそうだ。しかし、血が繋がっていなかったらどうなるのだろう?

この「血が繋がっていない」という部分は何度となく命題として、三人の目の前に突きつけられる。
血の繋がっていない家族は家族と認められないのか?
血が繋がっていなくとも家族と信じていれば家族になれるのだろうか?


この「家族」ということに対していろいろな形で登場する。
娘が死んでもなおそのことを認められる幻想にとらわれ続ける男、捨て子とそれにまつわる物語、妹ゆえに兄からいじめられる姫君。
血の繋がり、家族という存在。



今度はさらに幅広い「他人を含めた」人間関係で考えてみよう。
例えば、三人は殺し屋に狙われているが殺し屋という存在は日常を生きる人間にとって「完全に常識外の存在」だ。
危険で、忌避すべき存在だ。
もし、彼らが三人が原因で殺し屋がやってきたことを知ったら?
しかもそのせいで被害を被ったら?
彼らを恨むだろうか、憎むだろうか、それとも、それでもなお仲良くしようとするだろうか。
殺し屋たちを三人が倒し、それで助けられても、原因は三人にあるのだ。
それを知ってなお仲良くできるだろうか?


自分たちが人と関われば迷惑をかけ、「世界の猛毒」と知られれば忌避され、ひどければ蔑視されるかもしれない存在。
それでもなお、血の繋がらない妹のため、三人だけで旅を続けるのだ。



ここまでは「自分と他者の関係」について中心だったが、逆に「自己の存在」についての話もある。

既述のパシフィカがまずその一人だ。
彼女は一度自殺しようと考えるシーンがある。
自分の兄や姉が友人も何もかも捨てて旅をし命がけで戦っているのも、仲良くなった人たちが殺し屋によって大事なものを傷つけられるのも、ある意味では彼女のせいでもある。
究極的には「世界の猛毒」と予言されたことが原因なのだが、パシフィカが死ねば、旅をする必要も殺し屋が現れる必要もなくなるのは事実だ。
結局彼女がどうなるかは語らないでおくとしておくが、彼女だけでなくいろんな人々が自分の存在意義というものを考え悩んでいる。



今回は人間関係についての紹介で終了。
ただ、これだけだと別の作品でも同じようなものが存在するだろう。
人間関係を綿密に描いた作品は、きっとたくさんあるはずだ。
ジョジョなんかまさにキャラ一人一人にドラマ作った良作だしね。
だから、次回は別の切り口。
「ギャグパートとシリアスパート」について語るよ。

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